夏の装いの代表、麻

夏の装いの代表、麻

熱を発散し、汗を吸う。天然素材の力と魅力。

麻

夏の装いの生地素材として、常に上位に挙がるのが"麻"。

自然の恵みそのままのシャリッとした爽快な肌触り、身体の動きなどに合わせて出来る適度なシワ具合など、その魅力は昔から今に至るまで、実に多くの人々をとりこにしています。

麻は、クワ科の一年草「麻」から製した繊維や織物です。茎の皮から繊維をとり、麻糸が作られます。麻は中央アジア原産で、熱帯から温帯にかけて栽培されています。また、種子からは油がとれるなど、生活に欠かせないものでした。

植物学上では五十種類もあると云われる麻ですが、装いの素材として用いられるのは限られており、「亜麻(あま)」と「苧麻(ちょま)」のみ。そのうち、夏着尺の最高峰として賞賛される上布(じょうふ)に用いられるのは苧麻の方です。

「上布」とは、麻を使った上等な平織り生地のこと。いにしえから、上質の麻を使った素材は重宝され、高級素材の代名詞でもあり、太古の時代には生地のグレードで「上布〜中布〜下布」と大別されていました。

素材そのものの質感で涼をとる。夏のお洒落の真打ち!

麻

麻の繊維にはストローのような通気口があり、身体の熱を発散させ、同時に汗を吸い取る動きをします。
さらりとした肌触りを創る天然のこの作用力が、高温多湿な日本の夏の衣料素材として最適ということもあり、麻はこの季節になると様々な意匠となり、人々を愉しませてくれます。

夏が暑いのは自然の営み上あたりまえ。だからこそ、颯爽と胸を張り、「季節を楽しむ!」という凛とした思いこそ、旬を愛でるための基本。そうすればいつもの小路にも趣を感じ、緑の葉のそよぐ姿にも、旬の息吹を感じるはず。

そんなときこそ、麻の魅力であるあのシャリ感や爽快な着心地、しっとりとした色合いをおすすめいたします。

盛夏涼装――人類最古の衣料素材といわれる麻で、夏のおしゃれをぜひお愉しみください。